2018-01-01から1年間の記事一覧

赤字の世界。

制作者の端くれとして、上司やクライアントから赤字をいただくことがある。“ことがある”というよりも、ほとんど必ずといっていいほど、赤字をいただく。切れ味鋭い刀で全身を切り刻まれることもあれば、急所をひと突きするような深手を負うこともある。無傷…

音が歌っている。【SPECIAL OTHERS ACOUSTIC @上野恩賜公園野外ステージ】

上野公園の野外ステージに到着すると、グッズの待列ができていた。僕もいそいそとその列に加わる。販売開始の時刻になるまであと一時間。水道の蛇口を思い切りひねったような陽光が降り注ぐ。蝉が、今日は一段と暑いぜ!と叫ぶように大きな声で鳴いている。…

観客席のあっちこっちで笑い声が沸き起こる「カメラを止めるな!」

巷で話題の低予算映画「カメラを止めるな!」を見に行く。場所はTOHOシネマズ新宿だ。こちらの映画館はオープンしてしばらくになるけど僕にとって初参戦の会場だった。いつも利用するホームグラウンドの映画館では上映されていなかったので、どうせなら足を…

サウナで「ととのう」という絶頂。

極端な言い方をするなら、「サウナの扉は快感への入り口だったんだな」と実感する。サウナのうだる熱さと水風呂の冷凍庫のような冷たさをくぐり抜けた先に、この宇宙と一つになるようなおかしな快感がある。尋常ではない「よがり」のようなものがある。深い…

夏の箱根の山。【金時山-明神ヶ岳-明星ヶ岳】

平日の昼間にしょっちゅう訪れる定食屋がある。ビル群の割拠する路地裏にひっそりと佇むお店で、雨の日も風の日も嵐の日も休むことなく年配のおばちゃんが一人でせっせと切り盛りしている。通いはじめて半月ほど経った頃、店の一角に「山と高原地図 奥多摩」…

富士山とつるつる温泉が待っている。【御岳山〜大岳山〜日の出山】

◯ 8:00 御嶽駅 2018年7月8日「ホリデー快速おくたま」に乗って御嶽駅に到着。土日になると出現するこの中央線の快速列車は、新宿から乗り換えなしで奥多摩まで運んでくれるありがたい列車だ。奥多摩方面に向かうときは必ずといっていいほど世話になる。それ…

見晴らしのいい山。【筑波山】

○ 7:31 渋谷駅 2018年6月17日東京の空模様はどんよりとした曇り空で、もくもくと漂っている雲の群れに太陽が覗く隙間は一分もなかった。僕が今日目指す山は展望の良さで知られる筑波山だ。願わくは山頂では雲が吹き飛び、美しい光景を目にすることができる…

また行きたくなる山。【伊豆ヶ岳〜子ノ権現】

○ 7:04 正丸駅 2018年6月2日(土)時計の針が早朝の5時をまわったばかりの山手線は、腕を組んで首をうとうと傾けながら頭を垂れてる人がたくさんいた。ついさっきまでクラブミュージックが鳴り響く薄暗い空間で、はじけていたとみられる若い男女のグルー…

十円玉という旅人。

十円玉を手に取って眺めていた。なんの変哲もない硬貨である。でも、十円玉とにらめっこしていると、こやつはとんでもない旅人かもしれないと思うことがあった。お察しのとおり、十円玉は定住の地を持たない。一泊二日や二泊三日、長くても十日間くらいの滞…

おそるおそる歩いた山。【大楠山】

○ 前日譚行ってみたかった街がある。僕はいまコンクリートジャングルの一角に住んでいるのですが、いずれは自然豊かな街に住みたいなあという気持ちが心の隅にずっとあって、三浦半島の逗子という街に前から興味があった。鎌倉までは行ったことはあるけど、…

吾輩は猫背である。

吾輩は猫背である。名前はまだ無い、わけがない。どこで生れたかとんと見当はつく。広島である。何でも薄暗い病院でオギャーオギャー泣いていた事だけは記憶している。吾輩の背中はこの時から立派に丸まっていたのだろう。 吾輩の事を知っている人間が見れば…

魂が共鳴してしまった喫茶店。【トンボロ】

お店の根っこにある魂とじぶんの根っこにある魂が共鳴するような、とても居心地のいい喫茶店に出会ってしまった。神楽坂の路地裏にある「トンボロ」という喫茶店です。 戸を開けた瞬間から「トンボロ」が僕のお気に入り喫茶店リストに入るまで時間はいらなか…

僕らはみんな夜景の点灯員。

うちに帰ってまずすることは、お風呂に入ることよりも、ごはんを食べることよりも、音楽をかけることよりも先に明かりをつけることである。電気をつけないことには部屋の中をまともに歩けないし、なにをするにも暗闇のままだと困ってしまう。それこそまちが…

おじさんにナンパされたときの話。

電車で知らないおじさんにナンパされたことがある。 僕よりだいぶ年配のNさんと一緒に帰っていたときのことだ。Nさんは会社の上司でもなく、学校の先輩でもない。お昼時によく出かける定食屋の常連のひとりでそこで知り合った間柄である。ふだんは寡黙だが、…

なんども歩きたくなる山。【陣馬山〜高尾山】

○ 8:10 陣馬高原下バス停2018年5月11日土曜日。晴天。僕は山間を走る早朝のバスに揺られていた。一週間の仕事を終えた金曜日の夜、山にまみれたい気持ちがうねるように高まって、あしたは山に行こうと決めたのだ。「なぜ山に登るのか?」「そこに山があるか…

スーパーは理性と本能の戦場だ。

仕事を終え、最寄駅を降りて、今宵の献立を一考しながらスーパーへと向かう。惣菜コーナーにたどり着き、好物の「かに玉あんかけ」や「ポテトコロッケ」が残っていることを発見すると、とたんに心は弾みだし、上機嫌になる。お酒を呑まない僕にとってそれら…

体に火がついた650円の湖南料理。【紅龍】

昼下がりに空っぽになったお腹を満たすため、神楽坂の路地を歩いていると「1時よりランチメニュー全品★650円★」という看板を見つけた。何も装飾されていないテキストだけのシンプルな看板である。が、そのワンフレーズは金欠の僕の胸にぐさりと突き刺さった…

コーヒーは砂時計のように消えていく。【カフェ・ラパン】

JRの御徒町駅から歩いてほどない場所に『カフェ・ラパン』という喫茶店がある。ぼくはこのお店の店主が淹れてくれるコーヒーとタマゴトーストのファンで折をみてはいそいそと訪れます。 コーヒーは決まって「ラパン・ブレンド」を頼みます。ラパン・ブレンド…

ほしいものなんて、本当はないのかもしれない。

ある万年筆がほしかった。喉から手がでるほどほしかった。デザインは文句のつけどころがないほど気に入ったし、文房具屋に赴いて試し書きをさせてもらったところ、書き心地も申し分ない。書くという行為を高いクオリティでもてなしてくれる万年筆で品格もあ…

どうして「尻笛」ではないのだろう。

あまり美しくない話です。ぼくはオナラをよくします。「よく」という二文字に背負わせるのも憚られるくらい、頻繁にこきます。もしこれまでのぼくのあらゆる行いを数値化したら、くしゃみの回数より、放屁の回数のほうが多いと断言できる。それもかなり圧倒…

トイレットペーパーの芯をいつも交換しているような気がする。

ぼくは宝くじを買っても当たったことはないし、ロト6を買っても当たったことはないし、何かのくじで当選する、ということは記憶の限りないとは思うんだけど(なので、買うこともほとんどありませんが)、トイレットペーパーの芯の交換にはよく当たる。会社…