2020-08-01から1ヶ月間の記事一覧

駅員「お触りください」

夏の暑い日。僕は山手線のホームで電車を待っていた。次発の電車を待つ列の後ろに並んでいる。前方には、休日のラフな格好をしたおっさんや、肌をさらけ出した若い女性がいる。そんなターミナル駅特有の喧騒の中、スマホをいじりながら電車を待っていると駅…

完璧な「横顔」は、存在するかもしれない。

今、都内のスターバックスでこの文章を書いている。資格の勉強をしている女性が僕の前方にいる。彼女の参考書から、資格について学んでいるということが推測できるのだ。何の資格か、具体的にはわからない。本のタイトルまではっきりと読み取ることはできな…

「私さ、生まれ変わったら桜の木になりたい」

あれは二、三年前の春の季節のことだった。初めて訪れた土地で感じのいい定食屋に入り、昼食をとっていた。客席の距離は近い。都心のカフェのように瀟洒な音楽もかかっていない。静かで、こじんまりとしたお店だ。 一人で心おだやかに地元の名物料理を食して…

人という景色にも、惹かれてしまう。

深夜、都内を走るタクシーの中で、窓の外の夜景をぼんやり眺めていると、なにやら喧嘩をしている二人組を発見。寝ぼけまなこながら、火花が飛びかっている二人の光景を追いかけはじめる。タクシーで横切るその数秒間の出来事は、意識的というより、ほぼ無意…

人類みな同級生の店。

これはコロナが世界に蔓延する前のお話です。 毎日のように通う定食屋がありました。そのお店は、10坪くらいの小さなお店で、10人も入れば満席です。料理は美味しいけれど、「ぜひ食べてほしい」と周りに喧伝するほどのものではない。食べログの点数も3.0を…

出会った瞬間から友だち。

友人と息子のジョージくんと二子玉川の公園で遊んでると、名前の知らない男の子がいそいそとこちらに向かってやってきた。その男の子は自分の名を名乗ることもなく、「ほら、いっぱいいるよ」と手のひらにのっけたダンゴムシをどうだと言わんばかりにわれわ…

雨の日のほうが晴れることもある。

外にいるときは雨が嫌いだけど、家にいるときは雨のほうが好きです。 小窓の向こうでしとしと降りだす雨。隣の家の瓦屋根に落ちる雨粒を時折見やったり、その時に生じる雨音を聞きながら、本を読んだり、作業をするのが好きです。 なぜだかわからないけど、…

ゴミ屋敷の車。

鉄板の上でじゅうじゅう焼かれているお好み焼きの気持ちが今ならわかるくらい、外が暑い。息を吸うと喉が焼けてしまうのではないかと心配になるほど、灼熱の太陽の光が僕の全身をめがけて降り注いでくる。 国道の横断歩道の信号が青になって渡ろうとしたら、…

ペウカミ

履くだけで気分が上がってしまう靴ってありますよね。僕にとってそれはカンペールの定番モデルのペウカミで履いているだけでちょっと気分が高揚してしまう。念願だった靴をようやく手に入れた高揚感もあると思うが、履いてみると、想像以上に歩きやすく、「…

静かに蚊が刺してきた。

痒い。足のあちこちがムズムズする。無意識のうちに手が両足に伸びてボリボリ掻いている。 そのとき僕は、突き刺さる陽射しに耐えながら、緑が多い公園のベンチで友人の息子が遊具でキャッキャと遊んでいる姿を「平和だなあ」と眺めていた。友人の子どもを筆…