愛の告白

えんえんと長く降りつづく梅雨のようにホテル暮らしが続いている。来る日も来る日も、朝起きたら仕事に出かけ、終わるとホテルに戻ってくる。こうした生活の中で唯一と言ってもいい楽しみは食事になるはずなんだけど、会社から外食禁止令が発令されているた…

音楽が必要だ、この世界には。【20200920 スペアザ@日比谷野外音楽堂】

SPECIAL OTHERSのライブに行ってきた。本当なら今年の春先と初夏にライブがあり、そのチケットも確保していたんだけど、ご存じのようにコロナの影響で全てのライブが延期となっていた。そんな折、ついに、待ちに待ったライブの開催である。 会場は日比谷の野…

お祭りに行くと、小学生の僕がいた。

去年の秋、生まれ育った街の祭りに行った。最後に行ったのは僕が中学生か高校生くらいの頃で、かれこれもう二十年も昔のことになる。その祭りは二日間の開催で数十万人の人が訪れる、にぎやかで規模の大きなお祭りだ。実家に住んでいた頃、僕は街をあげての…

駅員「お触りください」

夏の暑い日。僕は山手線のホームで電車を待っていた。次発の電車を待つ列の後ろに並んでいる。前方には、休日のラフな格好をしたおっさんや、肌をさらけ出した若い女性がいる。そんなターミナル駅特有の喧騒の中、スマホをいじりながら電車を待っていると駅…

「私さ、生まれ変わったら桜の木になりたい」

あれは二、三年前の春の季節のことだった。初めて訪れた土地で感じのいい定食屋に入り、昼食をとっていた。客席の距離は近い。都心のカフェのように瀟洒な音楽もかかっていない。静かで、こじんまりとしたお店だ。 一人で心おだやかに地元の名物料理を食して…

人という景色にも、惹かれてしまう。

深夜、都内を走るタクシーの中で、窓の外の夜景をぼんやり眺めていると、なにやら喧嘩をしている二人組を発見。寝ぼけまなこながら、火花が飛びかっている二人の光景を追いかけはじめる。タクシーで横切るその数秒間の出来事は、意識的というより、ほぼ無意…

知らない道。

考えごとをしながら歩いていたら知らない道に迷い込んでしまった。近所のはずなのに見たことのない場所だ。はて、いったいどこで道を間違えたのだろう。 さて、グーグルマップを立ち上げるかどうか。グーグルマップさんに尋ねれば、こうして道に迷っても現在…

おいらはカエル。

ゲコゲコ。おいらはアズマヒキガエル。名前はない。ニンゲンたちはカエルって呼ぶ。おお、またおいらの魅力に釣られてニンゲンがやってきた。 この小さな立方体の空間に連れてこられてから二年ほど経っている。多摩川のほとりの茂みで遊んでいたら、ニンゲン…

NBA JAPAN GAMES 観戦記

何を隠そう(べつに隠してはないんですが)、僕はバスケ好きである。中学、高校、大学と僕の学生生活はバスケとともにあった。だから、バスケットの世界最高峰のリーグであるNBAは、あらゆるスポーツの中でいちばん好きなスポーツです。シーズン中は、うちに…

静謐を買う。秘湯・中房温泉。

山の夜は、真冬の雪夜のように静謐です。僕は今、長野の山奥にある温泉旅館にいます。縁側の椅子に腰掛け、静かな、それでいて、良質な時間を過ごしています。 北アルプスの燕岳の登山口にある「中房温泉」という温泉旅館。東京から電車とバスを約4時間ほど…

日常に読点を打つようなお寺。鎌倉の妙本寺。

「鎌倉の『妙本寺』というお寺が好きなんです」と打ち明けてくれたのは会社の同僚だった。なんでも駅近のわりには、人が少なく、とても落ち着けるいい場所だと彼は言う。失礼ながら、僕はそのお寺の存在を一切知らなかった。これまで何度か鎌倉に訪れ、その…

これは見事な景色だ。蛭ヶ岳登山(丹沢主稜縦走)

2019/5/5〜5/61日目:西丹沢ビジターセンター〜檜洞丸頂〜臼ヶ岳頂〜蛭ヶ岳頂〜蛭ヶ岳山荘(泊)2日目:蛭ヶ岳山荘〜丹沢山頂〜塔ノ岳頂〜大倉BS 3月の中頃、山好きの友人から、「ゴールデンウィークにご来光を拝む登山を計画しています」という連絡をも…

STARBUCKS RESERVE® ROASTERY TOKYOに行く。

日曜日の朝。部屋の掃除をしていると友人から「中目黒にできたスタバ行かない?」というラインが届いた。先月末にオープンした「スターバックスリザーブロースタリートーキョー」のことだろう。僕は迷った。スターバックスに対して強い思い入れはないし、そ…

シーソーゲーム 〜勇敢な”変”の歌〜

あれは確か僕が小学6年生の修学旅行のときのことだった。栃木の日光にバスで向かう途中、車内ではクラス全員でヒット曲を歌うカラオケ大会のようなイベントが催されていた。歌の選曲はサザンオールスターズ、Mr.Children、スピッツ、SMAP、globe、安室奈美…

夏の箱根の山。【金時山-明神ヶ岳-明星ヶ岳】

平日の昼間にしょっちゅう訪れる定食屋がある。ビル群の割拠する路地裏にひっそりと佇むお店で、雨の日も風の日も嵐の日も休むことなく年配のおばちゃんが一人でせっせと切り盛りしている。通いはじめて半月ほど経った頃、店の一角に「山と高原地図 奥多摩」…

富士山とつるつる温泉が待っている。【御岳山〜大岳山〜日の出山】

◯ 8:00 御嶽駅 2018年7月8日「ホリデー快速おくたま」に乗って御嶽駅に到着。土日になると出現するこの中央線の快速列車は、新宿から乗り換えなしで奥多摩まで運んでくれるありがたい列車だ。奥多摩方面に向かうときは必ずといっていいほど世話になる。それ…

見晴らしのいい山。【筑波山】

○ 7:31 渋谷駅 2018年6月17日東京の空模様はどんよりとした曇り空で、もくもくと漂っている雲の群れに太陽が覗く隙間は一分もなかった。僕が今日目指す山は展望の良さで知られる筑波山だ。願わくは山頂では雲が吹き飛び、美しい光景を目にすることができる…

また行きたくなる山。【伊豆ヶ岳〜子ノ権現】

○ 7:04 正丸駅 2018年6月2日(土)時計の針が早朝の5時をまわったばかりの山手線は、腕を組んで首をうとうと傾けながら頭を垂れてる人がたくさんいた。ついさっきまでクラブミュージックが鳴り響く薄暗い空間で、はじけていたとみられる若い男女のグルー…

十円玉という旅人。

十円玉を手に取って眺めていた。なんの変哲もない硬貨である。でも、十円玉とにらめっこしていると、こやつはとんでもない旅人かもしれないと思うことがあった。お察しのとおり、十円玉は定住の地を持たない。一泊二日や二泊三日、長くても十日間くらいの滞…

おそるおそる歩いた山。【大楠山】

○ 前日譚行ってみたかった街がある。僕はいまコンクリートジャングルの一角に住んでいるのですが、いずれは自然豊かな街に住みたいなあという気持ちが心の隅にずっとあって、三浦半島の逗子という街に前から興味があった。鎌倉までは行ったことはあるけど、…

なんども歩きたくなる山。【陣馬山〜高尾山】

○ 8:10 陣馬高原下バス停2018年5月11日土曜日。晴天。僕は山間を走る早朝のバスに揺られていた。一週間の仕事を終えた金曜日の夜、山にまみれたい気持ちがうねるように高まって、あしたは山に行こうと決めたのだ。「なぜ山に登るのか?」「そこに山があるか…