服探しは、宝探しと似ている。

服の買い物というのは、いくつになっても胸が高なってしまう。もちろん、すべからくすべての買い物中にそうなるわけではない。たとえばアウトレットモールに訪れたときや、ショッピングモールで大セールを開催しているときなど、リーズナブルよりさらにお求めやすい価格になっているときの服探しは、お預けを喰らった犬のようにふんふん鼻をふかしてしまうくらい、ちょっと高揚している自分がいる。

そのモードに入っているときの僕は、服探しというよりも宝探しの心算で手当たり次第に探索していく。どこかに個性的で瀟洒なシャツやパンツは隠れてないかな、とまだ見ぬお宝の発見を求めて衣服探検隊の隊長(他に隊員はいないけど)としてファッションジャングルの中を歩いていく。

運よくお宝を発見できたときは、小さくない熱狂的興奮を心に宿し、一刻も早くレジに持っていって自分のものにしたい衝動に駆られる。が、ここで功を急いではいけないと自分を落ち着かせる。とにもかくにも試着をしてからだ。どれほどデザインが素晴らしく、ファッション性が高いものでも、自分に似合わなければそれはゴミ(と言ったら失礼ですが)も同然である。なので、僕は気に入った服を見つけたときは、ほぼ必ず試着をする。試着をして「これ似合っているな」と判断しても、買うと決意するには至らない。そこでふたたび少考する。

気に入った服があって、試着すると似合うことがわかって、それでもまだ何を迷うことがあるんですか? と思うかもしれません。でも僕はそこで一拍冷静になって考える。その服が僕の持っている他の衣類と似合うかどうかを。

たとえば素敵なシャツを見つけたら、自分の持っているパンツや靴下、靴とうまくかちっと合わせることができるのか、想像力を働かせてイメージする。そしてもしうまい組み合わせがほとんど見つからなかったら、それがどんなに洒落た服でもきっぱりとあきらめる。そういうときに無理をして手に入れても活躍できる機会はほとんどないとわかっているから。

先に述べたように僕は衝動買いするようなタイプではありません。購入に至るまでにいくつかテストがあり、わりにシビアに判断します。だからこそ、なおのこと、服探しは宝探しのような気がするのだ。おいそれと出会えない宝の服を探して僕は週末旅に出る。