駅員「お触りください」

夏の暑い日。僕は山手線のホームで電車を待っていた。次発の電車を待つ列の後ろに並んでいる。前方には、休日のラフな格好をしたおっさんや、肌をさらけ出した若い女性がいる。そんなターミナル駅特有の喧騒の中、スマホをいじりながら電車を待っていると駅員のアナウンスが聞こえてきた。

「ーーー、お触りください」

最後のフレーズを聞いて、僕は耳を疑った。駅構内で「お触りください」とはなんと大胆なアナウンスであろうか。ほうかほうか、触ってええんか。

いや、そんなわけはあるまい。「白線の内側までお下がりください」と言ったのだろう。危うく法に触れるところだった。アブナイ、アブナイ。酷暑の夏によって、頭の機能の一部がショートしてしまっているのかもしれない。アブナイ、アブナイ。もしかしたら、世の痴漢男性も、激烈な暑さによる頭のショートによって「お触りください」と間違って聞き取ってしまったのではないだろうか。あるいは、そうなのかもしれないと思うと、いささか同情…するわけがない。