人類みな同級生の店。

これはコロナが世界に蔓延する前のお話です。

毎日のように通う定食屋がありました。
そのお店は、10坪くらいの小さなお店で、
10人も入れば満席です。
料理は美味しいけれど、「ぜひ食べてほしい」と
周りに喧伝するほどのものではない。
食べログの点数も3.0をほんのちょびっと超えたくらい、
といえば、だいたいのレベル感が想像できるかもしれない。
そんなどこにでもありそうなお店ですが、
それでも毎日のように足が向いてしまいます。

いちばんの理由は、
店主のおばちゃんとお客さん。
僕の倍くらい歳が離れているおばちゃんや、
年齢も、性別も、職業も、ばらばらのお客さんたち。
損得の関係はなんにもなく、
肩書きを脱いだただの人が集まっている。
漂うのは放課後のようなワイワイ感。
みんな同じクラスの生徒のような感じで、
お昼が楽しい時間になっていたのです。

その空間にいるときだけは、仕事のことをすっかり忘れ、
その場にいる人たちと他愛のない雑談をする。
昼ごはんを食べに行っているというよりも、
人に会いに行っているという感覚。
それが楽しくて、会社に行きたくないなと思う日でも、
お昼を食べに行きたい(みんなに会いに行きたい)という欲が現れ、
重かった腰も、少しだけ軽い腰になって玄関の扉を開けます。

人類みな同級生。
おいしい食事がとれる場所ももちろん好きだけど、
仲良くなれる人たちがいる場所が僕はいちばん好きです。