夏の始まりを予感させる朝。

まだくっきりと目が覚めていない中、オードリーのオールナイトニッポンを聴きながら、冷蔵庫から小松菜、ブロッコリー、玉ねぎを取り出し、台所でそれぞれの食材を小さくカットする。一週間分の夜ごはんの材料をジップロックにパッキングしてひと息つく間もなく、そのまま近所のスーパーに出かけた。

外は曇天の曇り空で、薄暗く、雨の残滓が降っていたが、お日さまが雲の隙間からひょっこり顔を出し、「これから晴れるぞー」という雰囲気を漂わせている。まるで長く続いた梅雨明けの合図のように見事な青空が空に現れ、ミーンミーンと蝉がいっせいに鳴き始めた。この瞬間をいまかいまかと待ちわびていたように。

いよいよ夏が始まる。そう思わずにはいられない日曜日の朝だった。

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しかしそうした僕の予想を──願いに近い予想を──あざ笑うかのように午後になると空は大群の雲で覆われ、強い雨が降り始めた。道路や建物の壁に当たる雨音が部屋の中にいても聞こえてくる。「雨の音は心臓の鼓動と同じリズムだから、心地よく感じる」という小話をどこかで誰かに聞いた気がするが、これほどまでに雨が続くと、さすがに気分も沈んできますよね。せっかくの日曜日なんだから、散歩くらいさせてくれよっと思うんだけど、そうした庶民の願いは軽くいなされるように却下されてしまったのかもしれない(誰に?)。
 
外の雨を恨みながら、ある仕事のネーミング案を考え始める。明日までに追加の案が必要になって、まだまだ掘り足りないところがあり、もう少し考えねばと思っていたのだ。MacBookを開いて、辞書機能をフル活用し、いい言葉ないかなあとこつこつと言葉の採集をはじめ、「おお、これはいいじゃん」と思うものを見つければ、これまでに集めた言葉と組み合わせたりして、ネーミングの開発(といったら大げさだけど、なぜか「開発」という言葉を使うことが多い)に取り掛かる。そんな作業を、ときに集中して、ときにスマホゲームをしながら取り組んでいたら、いつの間にか日の沈む時間になっていた。

東京にいると夕日が沈む景色を拝むことはむつかしい。だから、東京から離れた場所に赴いたときに、真っ赤な夕日が地平線の向こう側に落ちていく光景を目にすると、それだけでなんだかグッと胸にくるんですがそれは歳をとったせいなのでしょうか。あるいは、夕日の光景が少年時代のころを思い出し、感傷的な気分になってしまうのかもしれない。

午後の長い時間を仕事に費やしていたので、ここいらで少し日曜日を堪能したいと思い、macを閉じて外に出てみる。雨は止んでいたものの、雨雲と青空がまだらに入り混じり、雲の浮遊の行き先によって、今いる場所がまたどしゃ降りになることが予想され、遠くまでの散歩はやめておこうと肩を落とした。

それにしても世界がバグってしまったように雨の日がつづきますね。ゲームであればリセットボタンを押して晴れの日になるまで今日を繰り返せるんだけど、この世界にリセットボタンはないようで空から降りつづく無慈悲な雨を駄々こねながら受け入れるしかない。街全体がドームで覆われれば、雨なんて気にしなくていいのになあ、と子どもの頃に思っていた夢をふと思い出した。

ゆくあてもないまま、ゆらゆらと散歩していると無地のダークグリーンのシャツを着た人を見かけて「あのシャツかっこいいなあ」と憧れの念を抱き、それから思考回路がピピピピと動いて、どういうわけか無印の服がほしくなった。といいつつ、なぜ無印のシャツがほしくなったのかは心当たりがある。

さまざまなブランドが無地のシャツを出していると思うんだけど、最近買った無印のビックシルエットTシャツの肌触りと着心地が素晴らしく、その時は白Tを買ったのですが、たしかダーク系の濃い目のカラーのTシャツもあったはずたよなあと思い出したのです。よし、このまま隣の駅にある無印に行ってちょっくら見てみようかと歩を駅に進めたが、電車に乗る寸前で辞めた。

いちばんの理由は雨が降りそうだったからです。今日はお気に入りのカンペールの靴を履いているから、できる限り、雨に濡らしたくない。雨に濡れて革をヨレヨレにしたくないという気持ちが強く働いて無印に行くのをやめました。まあ、Tシャツはいつでも買いにいけるわけだし、今日ムリに行かなくたっていいですもんね。

で、進行方向を変えて駅前の本屋に入る。僕は暇になるとしょっちゅう本屋に行って暇をつぶす癖があるのですが、このときもその癖で何も考えずに店に入ると、雑誌や書籍からいろんな言葉が頭の中に流れ込み、気づいたらネーミングの単語探しのスイッチが入り、仕事のつづきのようなことをしていました。ネーミングのヒントになりそうな言葉はないかなあ、と宝探しをするように目をかっ開いて、本棚を眺めてみるものの、なかなか「これや!」という単語は見つからない。

こうなってしまっては、もっと本格的に探したくなってきて少し離れた場所にある大型の書店に向かうことにした。雨も気になったが、まだ降らない、という根拠のない直感が働きました。後悔することにならなきゃいいんだけど、このときの僕は、それ以上にいい言葉を探したくなっていたのです。

お洒落な人たちが集まる本屋でたくさんある雑誌の名前を見回しつつ、いくつか手にとってパラパラめくっていると、「お!」と手が止まり、これはいいかもしれないという言葉を発見。仕事のつもりで出かけてなかったけど、結果的に、気分転換に外に出てよかった。

店の外に出ると今にも雨が降り出しそうだったので、小走りで家に帰宅。ひとっ風呂浴びて、夕食の支度をしていると、ザーーーと雨が降りはじめたじゃないですか。ふぅ、雨に打たれる前に帰れてよかったです。

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