ドンドンドン‼︎

友人とその息子のジョージくんと郊外の小さなショッピングセンターで遊んでいるときのことだった。ジョージくんがゲームコーナーでポケモンをプレイしているときに、下腹部のあたりに尿意を感じ、友人に「トイレに行ってくる」と告げ、その場を離れた。

すっきりしてトイレから出、他の売り場を見てまわりながら、ゲームコーナーに戻ると、二人の姿がなかった。どこに行ったんだろう? とポケットからスマホを取り出してLINEを確認するが、友から移動した旨の連絡はない。とりあえず、キョロキョロと辺りを見まわしながら、そのフロアを散策するが友人とジョージらしきシルエットは見つからない。もしかしたら彼らもトイレに行ったのかもしれない、と思い、のぞきに行くと、ジョージくんの声が聞こえてきた。しかも、どういうわけか僕の名前を叫んでいる。

「ここにいるよ」とトイレに入って行ったら、ジョージくんは大便器の扉を激しくドンドンドンドン叩きながら、僕の名前を叫んでいた。おそらく、いや、間違いなく、僕がう○ちをしていると勘違いし、面白がって叩いていたのだろう。なんとも恐ろしい子どもである。

そういう状況で、僕がひょっこり入り口から現れたものだから、友は顔面蒼白し、ジョージくんは「あれ?」という顔をした。

トイレの中に入っているのは僕ではない。ではいったい誰だ? 僕らの知らない赤の他人である。慌てて、友人は息子に「やめなさい」と言い、トイレを後にした。「すみませんん」とひと言添えて。

もし僕がトイレの中に入っていて、知らない子どもから、身に覚えのない名前を叫ばれ、戸をドンドン叩かれたら、出るものも出なくなるだろう。なんて、むごいことをしてしまったのだ。なんだか、自分までひどく申し訳ない気持ちになって、「すみません」と謝ってトイレを後にした。よい子のみんなは、トイレを叩いちゃいけません。