大人への第一歩

制服を着た小学生男児がポケットに両手を突っ込んで歩いていた。出勤中の大人たちと同じ歩行スピードで彼は登校していた。子どものように元気よく駆けずり回る姿はどこにもない。子どもたちが有している、無邪気な笑顔は影を潜め、クールな表情をしたまま、彼は僕とすれ違った。

ポケットに手を入れるという行為は、「俺は走らない」と、子ども時代の自分と決別を示す、大人の階段をのぼる第一歩なのかもしれない。そういう意思を彼の目に感じた。