公園と女子高生のトロンボーン

夏の終わりの日曜日の昼下がり。公園の隅の木陰の下で、女子高生がトロンボーンを吹いていた。お世辞にも上手いとは思えなかったけど、失敗したフレーズを何度も繰り返したり、難しそうなフレーズを吹けるまで練習したり、強い熱量をひしひしと感じとることができた。

もしかしたら、吹奏楽部の強豪校で、レギュラーメンバーに選ばれるために必死に練習しているのかもしれない。あるいは、弱小校のキャプテンで、部を率いる責任感から、お手本となるように自主練習をしているのかもしれない。

いずれにしても、夏の暑い日に、制服を着て懸命に汗を流している彼女の姿はとても美しかった。

美しいメロディーを吹けないからといって、彼女を下手に思ったり、笑ったりすることは決してない。むしろ、部活以外の自分の時間を削って、自分のスキルを高めようとする姿勢に、僕は少し目頭が熱くなってしまった。こういう陰の努力というものに、僕は妙に弱く、涙腺が緩んでしまう。

女子高生が一人、木陰の下で吹きつづけるあの姿を、僕はしばらく忘れそうにない。