2019-01-01から1年間の記事一覧

散歩の方位磁針は心である。

目的のない散歩というものは心が方位磁針になる。目的地があるならば、ゴールに向かって弾丸のように行進するのだが、行くあてのない散策は感情のパラメーターが上昇した方位が進路だ。心のアンテナを受信した道が進行方向になるのである。 ぼくはあたかもコ…

銭湯は冷える日の幸せ。

厚手のダウンを着込み、冷えきった夜の世界を体を縮こませながら、いそいそと銭湯に向かった。土日の夜に行くと、決まって混雑をみせる近所の銭湯も、冷気に包まれた今日のような日なら比較的空いてるだろうと思ったのだ。それに、この冷たい空気を味わった…

好きになるのに欠点の多さは関係ない。

ほんとうなのかと思われるかもしれないけれど、僕は文庫本よりも、ハードカバーの本が好きだ。かつては、本といえば文庫本だった。価格は良心的だし、持ち運びにも場所を取らないし(コートの裏ポケットにだって入れられる)、なにより単行本に比べて軽い。…

この世界で僕だけが取り残されているように思えた。

雲の隙間から一羽の鳥が飛んでいくのが見えた。大空を優雅に舞っているではなく、一点の目的地に向かって力の限り全速力で飛んでいるように見えた。僕の人生であのくらい真剣にどこかに向かって駆け抜けたことは一度だってあっただろうか。脇目も振らずに走…

アイスミルクではなかったですか?

冬の寒い朝、カフェに入って「ホットミルク」を注文した。ほとんど待たないうちに店員さんは僕が頼んだドリンクを提供してくれた。しかし、その中身は「ブレンドコーヒー」だった。 おかしいなことが起きてると僕は思った。まちがいなくホットミルクと言った…

幻の春

まるで空気の衣替えしたように、東京は暖かくなり、春の陽気を感じずにはいられなかった、今日という日。ただそれだけなのに、ただ暖かくなっただけなのに、ひどく心が昂ぶった。 春になると花たちが一斉に咲き始めるように僕の体も高揚感に満たされて、何か…

「出会い頭の衝突にご注意ください」

平日の朝の通勤時間帯。東京メトロ半蔵門線の九段下駅のホームから階段を上った先で、あれは聞き間違いではないと思うんだけど、「出会い頭の衝突にご注意ください」という駅員の案内を耳にした。 繰り返しアナウンスをしていたところをみると、おそらく通勤…