映画三昧

5月は28本の映画を見た。
テレワークだったことで通勤がなくなり、
終業するやいなや服を脱いで風呂に入って、
ごはんを作って映画鑑賞の生活を送っていた。
平日も休日も関係なく、ほぼ毎夜の習慣のように。

メジャーな作品からマイナーな作品、
ファンタジーからドキュメンタリーまで。
ジャンルレスに気になった映画を片っ端から見るようにした。
面白くなさそう、と思っても、
月の定額代のほかに追加料金はかからないので、
まあ、いいかと思って見ると思いの外おもしろかくて、
こりゃ当たりを引いちまったぜ、と歓喜したり、
かけがえのない2時間をクソ映画に費やしちまった、
という嘆く夜もあった。

そんな映画三昧の5月で、とくにこれは最高だったなあと思ったのは、
まったくありきたりで申し訳ないのですが、
「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」と
「アベンジャーズ/エンドゲーム」を土日の夜に続けて見たとき。

マーベル作品の鑑賞本数はほとんどなく、
「インフィニティ・ウォー」を見たときも、
各キャラの特徴や相関関係がよくわからなかったりしたけれど、
それでも最後まで飽きさせずに胸を躍らせるストーリーは
さすがのひと言でのめり込むように見入ってしまった。
後編とも言われてる「エンドゲーム」も、
いくばくか退屈なところもあったけど、
クライマックスの盛り上がり方はとてつもなく、
これは映画館で見たかった作品だなあと悔やまれた。

6月に入っても相変わらずテレワーク生活はつづいている。
でも、5月より忙しくなったこともあり、
毎日のように映画を見ることはできなくなった。

ほぼ毎日映画という日々を初めておくったが、
なかなか楽しい一ヶ月で、明日は何を見ようかな? 
と考えるだけで、心はぶくぶくと浮き立ったし、
週末はどんな大作を見ようかと悩むことは、
わりと幸せな悩みだった。

降りつづく雨を浴びるように映画に染まった一ヶ月。
世の中にはいろんな「◯◯三昧」があると思いますが、
映画三昧という日々は、なかなか悪くない日々でした。

薬局に売っていない薬

■名前:エイガ

■価格:100~2200円

■効能:・心の棘を取り除きます
     ・沈んだ気持ちを晴らせてくれます
     ・カタルシスを味わせてくれます
     ・気分を高揚させてくれます
     ・ご飯がおいしくなります

■用法:家で観るより、映画館で観たほうが効果は覿面(てきめん)。
          大画面、音響設備、周囲の笑い声・泣き声、
            これらの環境が薬の力を倍増させます。

■用量:個人によるが、一日1錠 or 2錠が好ましい。

■成分:・監督の情熱
     ・脚本家の苦しみ
     ・演者の冒険心
     ・作曲家の忘我
     ・カメラマンの技術
     ・照明の知恵
     ・美術の眼識
     ・ADの徹夜

観客席のあっちこっちで笑い声が沸き起こる「カメラを止めるな!」

巷で話題の低予算映画「カメラを止めるな!」を見に行く。場所はTOHOシネマズ新宿だ。こちらの映画館はオープンしてしばらくになるけど僕にとって初参戦の会場だった。いつも利用するホームグラウンドの映画館では上映されていなかったので、どうせなら足を踏み入れたことのない劇場に出かけてみようと思ったのです。

その日は、平日(月曜日)の朝だというのに、ほぼ満席で、前方と後方隅にポツポツと空いている程度だった。僕は後方左手の通路と壁に挟まれた二席のうちの一つを取った。それにしても休日でもないのに、ものすごい埋まり具合だ。封切り当初は2館だけの上映だったのが、その面白さによってあれよあれよと評判が広がり、今では190館を超えていると聞く。鑑賞した人から口々に「面白かった」という話も聞くし、拡大上映にふさわしい、素晴らしい映画なのだろう。そういう前評判を耳にしていると期待はいやでも膨らむ。

「カメラを止めるな!」が上映されるTOHOシネマズ新宿の7番スクリーンは約400席用意されたわりと大きなスクリーンで、そのうちの9割くらいは埋まっていた。もう一度言いますが、平日の朝でこの現象です。映画の人気を肌で実感した瞬間だった。この日はちょうど甲子園の準決勝が行われる日でもあり、「金足農業(吉田輝星選手)」か、「カメラを止めるな!」がその時の日本の二大話題だったような気がする。と言ったら言い過ぎでしょうか。月曜日の朝に映画館にひしめき合う異常性に尋常ではない観客の熱量をひしひしと感じたし、甲子園もこれくらいの、いやそれ以上の盛り上がりがあるのだろうと想像する。

上映時刻が迫り、壁側の席に腰を下ろす。僕の隣席はどんな人だろう。可愛い人だったらドキドキして映画に集中できないかもしれない、なんて淡い妄想をしていたが、実際に腰をかけたのは50代くらいのおじさんだった。それがまあ現実というものである。おじさんは腰を下ろすと膝と腕を組み、スクリーンに目をやった。おじさんはポップコーンやドリンクを頼んでいた。でも、まだそれらに手をつけないところをみると、おそらく上映開始後に食べるんだろう。

久々に映画館で予告を見た。なんというか映像はすごいんだけど、話の内容はどれも既視感のあるもので、ハリウッドもネタに困っているんだろうなということが伺える。その点、これから見ようとしている「カメラは止めるな!」は独自性がある(のだろう)。制作費ウン百億円のハリウッド映画と制作費300万円の本作。でも観客が払う料金は同じ1800円。映像の美しさや迫力で勝てるわけがないので、そういう映画に対してアイデアで勝負しているわけだ、この映画は。秀逸なアイデアを一本帯刀し、それのみで戦にやってきたのである。で、メジャー映画をばっさばっさと切り倒そうとしているのである。やはりそういう映画は気になってしまいます。

長い予告編が終わり、おなじみの映画泥棒の登場後、本編が始まった。隣のおじさんはポップコーンを食べ始めた。周囲に気を使ってか、音を立てずに静かに食べている。しかし、何かが匂う。コーヒーの香りだ。ゾンビのシーンを見ながら、香ばしい匂いがツーンと飛んでくる。まるで4Dのような新しい映画体験だ。おじさんはこれを狙ってコーヒーを持ち込んだのか。いや、そんなわけはない。

初めの約30分は自主制作映画さながらのチープさのある映像で淡々と進んでいく。撮影クルーがゾンビに襲われる光景が続く。この時の心境としては、もともとゾンビ映画が好きじゃないこともあって、なかなか退屈だった。何度も自分の腕時計を確認した。30分を過ぎた頃から、面白くなるという話を耳にしていたからだ。早くこの前半部分が過ぎるといいなあと思っていた。隣のおじさんは黙々とポップコーンを食べている。

場面は一転し、ここからが本編ですよ、というようなシーンが始まる。冒頭のゾンビの一連の場面は全てフリになっているのだ。手品と種明かしのセットみたいな構成で、ここからの種明かし具合がひどく笑える。コメディ映画と謳われていることも納得の出来栄えだ。会場のあっちこっちで、笑いが沸騰したようにアハハハと笑い声が生まれていく。隣のおじさんもゲラゲラと笑っている。笑うと息からコーヒーの香りが飛んでくる。なかなか刺激的な匂いだ。もう冒頭のゾンビの張り詰めたシーンではないんだが。

映画館でこんなにも吹き出してる人がいる光景はあまり記憶にない。いろんなところで言われているように(おもしろい)三谷映画みたいな笑いの量だ。気がつけば僕もアハハハと口に出して笑っていた。悶絶する面白さはないけど、笑いの渦が多くて、何度もお笑いヒットを食らった感じだ。エンドロールが流れたとき、わりと笑顔になって迎えられる満足度の高い映画だった。

映画に対して好感を抱いたこともあり、ふだん買うことはないパンフレットを帰り際に買って帰りました。映画にはいろんなジャンルがありますが、人を笑顔にする映画ってけっこう好きです。

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