帰り道のストロング

仕事を終えたあと現金をおろしに外にでかけると(ただいま絶賛在宅勤務中なのです)、ストロング系缶チューハイを飲みながら帰宅しているサラリーマンの男性を見かけた。白のYシャツに紺のスラックス、ビジネスリュックを背負っていたから、十中八九、仕事帰りの会社員に違いないと思う。サラリーマン男性の格好をしたコスプレの可能性もないとはいいきれないが、ほぼ限りなくゼロだろう。わざわざそんなことして何になる? 
 
まだ週の始まりの月曜日の夕方である。それでも、そのサラリーマンの男性は、きっと飲まなきゃ──家にたどり着く前に今すぐ飲まなきゃ──やってられない気分だったのだろう。そういう何かに逃避したり、一連の事象を忘れたくなる気持ちはわかる。そういうときお酒をやらない僕の場合はだいたい好きな音楽を流して頭の中を音楽で満たし、余計なことを考えなくするのだが、お酒が好きな人は、アルコールで気分を紛らわすのだろう。

上司に叱責されたのか、取り返しのつかないミスを起こしてしまったのか、交通事故的にトラブルに巻き込まれてしまったのか、あるいは部下に冷たい目で見られたのか、原因はわからないが、とにかく「やってらんねーよ、もう」という気持ちになってしまったにちがいない。それとも、単に砂漠を三日間彷徨ったあとのようにのどがカラカラに渇いて缶チューハイを希求していただけなのだろうか。それにしたってストロングである。お酒を嗜まない僕だって、このお酒のアルコール度数が強いことは知っている。ふつうの酒より、酔わせてくれるお酒でしょう。酔わせてほしい何かがあったのだろうと邪推してしまうじゃないですか。

その男性は、駅近くの喫煙所に立ち寄って幸せそうな顔をしてタバコとお酒を嗜んでいました。月曜日からどんなに気分が滅入ることが起きたって、ちょっとした幸福は手に入れられるようにできているのだ。そういう世界でよかった。