ロックな人とは。

セブンイレブンでアイスを物色していると店内に入ってきた一人の男に目を奪われた。黒の革ジャンに革パンツスタイルで、ウォレットチェーンをぶら下げ、靴はおきまりのようにブラックブーツを履いている。絵に描いたようなロックシンガーの格好をした人だ。上から下まで全身を眺めても素肌の部分がほとんど見えない。おいおい、季節は今、夏のはずなんだけど。と思ったけれど、ロックシンガーは涼しい顔をしておにぎりやサンドイッチを選んでいた。

アイスを買って外に出る。直前の雨の影響もあって空気はじとじとしている。不快な湿気が僕の身にまとわりついてくる。粘っこいイヤな空気だ。風も吹いていない。天気アプリを開くと気温は25度と出た。半袖でさえ、脱ぎ出したくなるくらい暑い。

ロックシンガーもビニール袋をぶら下げてコンビニから出てきた。相変わらず涼しい顔をして小気味のいいステップを踏みながら、あっという間に僕を追い越して街中に消えていった。

ロックとは何だろうか。
ある人は生き方だと言う。大きな組織ややり手の戦略家に巧妙に仕立て上げらながらステージに上がるのではなく、自分たちのやりたい音楽をやりたいスタイルを貫いていく姿勢のことだと言う。

僕は音楽をわりとよく聞くほうだし、個人的に親しみを持っている分野だがロックについて問われると答えに窮する。でも、僕は半袖の格好でさえ息苦しい日に、己のスタイルを貫いているその男の姿を見て「ロックだ」と思ってしまった。

大勢の意見に耳を貸さないどころか、地球環境にさえ、自分のスタイルを曲げさせない。音楽においても、ファッションにおいても、つまり、個人が表現できる全てにおいて自分のスタイルを誇示し、簡単には折れない。そういう人をロックと呼ぶのかもしれない。僕は夏の日の彼の姿を見て、ロックというもの、頭ではなく、心で理解した気がした。