買ってよかったと思うものは、たいだい、いい値段のするものだ。

 数年ほど前から、自己資金を捻出して手に入れたアイテムを自己評価するという習慣が続いている。20XX年はコレ、という具合に、その一年のうちに手に入れた全アイテムの中からもっとも買ってよかったと思うもの──あるいは限りなく後悔の少ないもの──を選ぶのだ。それらのベスト・イヤー・オブ・マイアイテムは、とくにどこかに発表するわけでもなく、自分の心の中にしまっている。

 というものの、秘蔵でもなんでもないので、そのベスト・アイテム・リストについてさらっと書かせていただくと、2015年は「kindle Paperwhite」、2016年は「BOSE soundlink mini」、2017年は「Air Pods」、2018年は「DannerのBULL RIDGE」というブーツである。kindle Paperwhiteは僕の読書習慣にいささか大げさに言えば革命を起こした。電子の本なんてありえない派の僕だったけど、kindleを手にしてから、本を読む量は加速度的に増加した。本は安く買えるし(セール本が多く出る)、メモも簡単にできるし(PCに簡単に同期できる)、何より片手で読めるので、電車の中で重宝した。しかも辞書機能がついているので、英文にもチャレンジしやすい。

 BOSE sound link miniは、僕の人生に音楽の恵みをもたらした。それまでは家に帰って電気を点けた後は、たいていテレビをつけることが多かったけど、購入後はsound link miniのスイッチをつけるようになった。大好きなspecial othersをはじめ、部屋で音楽やラジオを流すことが多くなった。

 sound link mini が家の中での音楽革命なら、Air Podsは家の外での音楽革命だ。外を歩いている時、ストレスなく音楽を楽しめるようになった。聴きたい曲を、すぐにセレクトして再生できるようになった。2016年、2017年は音楽の存在がとても身近になった二年間だった。

 それから去年、購入したBULL RIDGEというDannerのブーツは、僕の徒歩ライフに小さな革命を起こした。歩いても、歩いても、足(の裏)に疲労がたまらず、僕の脚をどこまでも歩いていける脚に変えてくれたのだ。わりといい値段のする靴だったけど、とてもいい買い物だったと思っている。

 どのアイテムも、そのカテゴリーの中では決して安いものではないと思う。ひどく高いわけでもないけれど、リーズナブルというわけでもない。でも、そういうものたちが、僕の人生にささやかな革命を起こしてくれた。この子らとはできるだけ長く付き合っていきたいと思わせてくれた。

 連休に入ってから、PLOTTERというシステム手帳を買った。手帳のわりには、いい値段のする代物だと思う。発売当初から気にはなっていたけど、その値段の高さから、手を出せないでいた。それにシステム手帳という僕の門外漢のところに心を惹かれなかった。ところが、この手帳はノートとしても優れもの(と思われるもの)だったのだ。ノートジブシーの僕にとって心の片隅に水たまりのように存在していたPLOTTERを文房具屋でじっくりと触ってみたら、「こいつはひょっとしてイカしたノートかもしれない」とふつふつと自分のものにしたい欲望が募ってしまい、ついに手を出してしまった。スケジュールも、仕事のメモも、日々のメモも、スクラップとしても、ぜんぶ一元管理できそうで、理想のノート・メモのような気がしたのだ。これまではポケットサイズのモレスキンを愛好することが多かったけど、それに取って代わる貫禄がある。もしかしたら、 ベスト・イヤー・オブ・マイアイテム2019になるかもしれない。そんな予感がした。その一方で、部屋の片隅に死屍累々と転がっている数ページしか使っていないノートと同じようになる可能性も多分に感じられた。たかだかノートに1万円以上も出して、紙くず同然になったらどうする? そういう不安も少なからずあった。買うか買うまいか、数十分間、手帳売り場で悶々としている僕に決断させてくれたのは、「いいものは、だいたい高い」という過去のデータだった。

 ノートの屍の一つになりうるか、あるいは、ノートのキングになりうるか、どちらの可能性もあるけれど、ピンときた自分の直感と過去のマイデータとPLOTTERの潜在能力を信じます。

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